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96年6月

山口 正司             


1996年6月 1日 土 晴れ      虫さされ 1996年6月 2日 日 晴れ      若い二人 1996年6月 3日 月 晴れ      企業サービス 1996年6月 4日 火 晴れ      夜の木立 1996年6月 5日 水 晴れ      自転車購入 1996年6月 6日 木 晴れ      既視感 1996年6月 7日 金 晴れ      りかちゃん訪問 1996年6月 8日 土 晴れ      アメリカンブルー 1996年6月 9日 日 曇り      土いじり 1996年6月10日 月 曇り後雨    のんたん 1996年6月11日 火 曇り時々雨   蚊 1996年6月12日 水 晴れ      神田屋 1996年6月13日 木 晴れ      歯周病 1996年6月14日 金 雨       カラス 1996年6月15日 土 晴れ      りんご果汁 1996年6月16日 日 晴れ      未来の家族 1996年6月17日 月 晴れ      裏通り 1996年6月18日 火 雨と強い風   回答 1996年6月19日 水 曇り後晴れ   除湿 1996年6月20日 木 曇り時々晴れ  はち公 1996年6月21日 金 晴れ      車のへこみ 1996年6月22日 土 曇り時々雨   相当かかる 1996年6月23日 日 曇り時々晴れ  アルミ缶 1996年6月24日 月 曇り後雨    二三日して 1996年6月25日 火 曇り      抗ヒスタミン剤 1996年6月26日 水 曇り      だっこバトンタッチ法 1996年6月27日 木 曇り      子供との会話 1996年6月28日 金 曇り      不良品 1996年6月29日 土 晴れ      かめのぼうや 1996年6月30日 日 晴れ      建礼門院

1996年6月1日 土 晴れ     虫さされ

 航平は顔に湿疹の薬を塗らないで一晩を過ごした。朝になると 再び顔に幾つも湿疹が出来ている。一体いつまで薬を塗り続ける のだろう。副作用はないだろうか。

 背中にあせもの薬と足には虫さされのような痕と、手にはダニ に刺されたような三つてんてんてんと続く痕も一晩で出来た。皮 膚科で完治宣言された翌日なのに。しばらく様子を見よう。



1996年6月2日 日 晴れ  若い二人

 すがすがしい天気が続く。日も長くて夕方は六時でも明るい。 航平は湿疹が残るが鼻の具合はよくて今まで特に大きな心配事 がなくて良かったねとチャコちゃんと話した。

 午後は三人で駒沢公園に出かけた。ベビーカーに乗って行っ た。外で泣いたが、もうあわてない。ベンチでうんちのおむつ を替えたり、ほ乳びんでミルクをあげた。横で若い二人が笑い ながらキスをしてた。

 航平を連れるとすれ違う人の多くが航平を見る。同じように ベビーカーを押す人は挨拶したり会釈したり微笑んだりする。 航平は私達の気持ちを明るくする。



1996年6月3日 月 晴れ  企業サービス

 先週のことだ。ピジョンの食器セットをあけてスイカの果汁 を入れたら洗っても落ちなくなった。翌日電話をして聞いてみ ると果汁は落ちないそうだ。それで同じカップを土曜日に送っ てきた。他に濡れティッシュや販促用パンフレットと切手を張っ たカップ返送用の封筒もはいっていた。

 昨日駒沢公園でカメラのフィルムを交換したときに途中でフィ ルムの巻き上げが止まった。今朝リコーに問い合わせると直し ますと言うので銀座六丁目のリコーに持っていった。保証期間を 過ぎていたが、愛想良く裏ぶたを全交換して代金を取らなかった。

 ほとんど同時に起こった迅速な愛想の良い企業サービスの向上 事例だ。しかし、冷静に思えば、ピジョンの食器は販売店で返金 されてもしかるべきだ。食器セットの表書きに果汁は使えないと 明記されていない。大体果汁の使えないベビー食器というのは不 良品だ。リコーのカメラはこの部分の故障が多かったのだろうか。 私は主張しない消費者だろうか。



1996年6月4日 火 晴れ 夜の木立

 お風呂後夕食前に航平が泣くので近くまでだっこしていった。 直ぐに泣き止んで寝たので戻ってベッドで寝かせた。夕食をチャ コちゃんと食べているとまた泣き出した。チャコちゃんは食事 を中断して航平をあやした。しばらくして落ち着いたので食事 が終わった僕にバトンタッチして航平を抱いた。  チャコちゃんも食事を終えたが航平は泣き止まない。僕が抱 いていながらも大声でわんわんわあああんと泣き続けた。恐ら くげっぷかなと思いながらまた近所の森に行った。外に出たと たん直ぐに泣き止んで木立ちの中で航平を抱いた。夜8時半だ。 帰宅を急ぐ会社員は視線を寄せる。

 航平は僕を随分外に駆り出してくれる。僕の鼻は木々の匂い が気持ちいい。夜のこんな心地よさは久しぶりだ。



1996年6月5日 水 晴れ  自転車購入

 夕方チャコちゃんが航平をだっこして三人でマルエツに買 い物に行った。昼はご飯だったから夜は前に食べて美味しかっ たこのピザもいいねとチャコちゃんは提案して小走りに鳥肉 を肉売場に戻して味の素の電子レンジで作るカリットシート の冷凍ピザを取った。

 家にはパイナップルも赤いピーマンもタマネギもあるし、 チーズを買ってこのできあいのピザの上に沢山のっけて食べ る。

 すぐ夕食が出来ると思った途端に時間と気持ちにゆとりが 出来て家にピザを置いて自転車を買いに行くことになった。

 自転車はチャコちゃんの念願で駒沢交差点の八百屋に行く ためにどうしても欲しい。航平を乗せて深沢児童館に遊びに 行きたいという未来もある。自動車の購入前に決して避けて は通れない。

 駒沢交差点の八百屋の先の山口サイクルで念願のブリジス トン自転車を手に入れた。新車は土曜日頃に届く。帰ってか らピザを食べながら余韻を楽しんだ。



1996年6月6日 木 晴れ  既視感

 風呂上がりに航平は何時も何か飲むが、ほ乳びんのミルク を飲まずに泣いた。あやしてベッドに置こうとするとまた泣 く。やはりミルクは飲まない。

 仕方なく暗がりでだっこを続けると何か遠い昔に自分が経 験したシーンを感じる。遥かかなたで夢かもしれない。自分 が誰かにだっこされている。

 気持ちが良くて、布団に置かれるのが厭でだっこを求める。 求めすぎると嫌われそうでかげんしながらだっこを求める自 分をシーンとして思い出す。

 シーンが何かは分からないが既視感を航平に感じる。自分 の命の源泉を暗闇の中に感じた。



1996年6月7日 金 晴れ  りかちゃん訪問

 出産時同室だったりかちゃんから電話があってチャコちゃ んはぶた公園で子連れで会ってから家に連れてきた。子供の 春菜ちゃんは航平と月齢は同じでも体格はずっと大きい。抱 いてみるとふあーとしていて航平のがちっとした感じとは随 分違う。いくら小さくても女の子のふくよかさがある。

 子育てを話すと育て方や接し方もまた違う。航平はもうすっ かり抱き癖がついてぐずって甘やかし放題の育て様だ。春菜 ちゃんは泣いても直ぐには抱かないしほとんど泣かずにおと なしい。春菜ちゃんがにこにこしたりすやすやしている間、 航平はだっこをねだったりぎゃーすかぎゃーすか泣き叫んで いる。

 心の中では家の育て方に間違いないと思うが春菜ちゃんの ように人の前で愛想を振りまけよと思う自分もある。子供は それぞれで人と比較したり本と比較してはいけないというが それは取りも直さず自然に比較してしまうものなんだなと感 じた。



1996年6月8日 土 晴れ  アメリカンブルー

 昼過ぎ春咲きの花が終わったプランターから忘れな草の種 をとってムスカリの球根を取って土をならした。始めは一つ のつもりだったけれど気分がのって六つをかたずけた。

 土を綺麗に慣らすとチャコちゃんは中島園芸に行きたいと 言う。もう半年以上も行ってない。チャコちゃんはしょっちゅ う出かけてちょこちょこと小さい花を買っていた。昨日の夕 方新しい自転車がうちに到着したから乗ってもみたい。

 とろとろ赤ちゃんのベビーカーとピカピカ自転車一家が駒 沢公園に入った所で、落語家の立川志の輔とすれ違った。子 供とグローブを持って帰るところだった。チャコちゃんの親 友が彼の弟子と交際している。その話をしようよと戻りかけ たが、チャコちゃんはまた機会があったらでいいよと言う。 一路中島園芸に向かった。一重のなでしことアメリカンブルー ともう一つ紫の花を手に入れた。

 自転車は淡いグリーン系のブルーで茶系のサドルと茶系の ハンドルラバーに籐風の茶の篭でオーソドックスな婦人用だ。 簡単に決めたがスタイル乗り心地とも気に入った。休みの日 の土いじりは気持ちがなごむ。年をとってからと思ってたが チャコちゃんにつられて楽しませて貰っている。



1996年6月9日 日 曇り  土いじり

 天気がどんよりとしていてもうすぐ梅雨だ。日が照って いないので屋上のプランターの手入れをした。

 相当昔のある日曜日にテニスをした。その横に畑があっ てテニスを楽しんでいる間ずっと横で青年が畑仕事をして いた。その時農業は大変だと思った記憶がある。

 今日は日曜日。ドライブやレジャーに出かけている人は たくさんいるだろう。友人達はどんな日を送っているだろ う。自分は一日プランターの土の中の根っこをとったり油 粕をかき混ぜたりしている。

 しかし、そんな土いじりが実に楽しくて、外にレジャー に出るのと同じように爽快感と達成感がある。テニスコー トの横の畑で青年がしていた農作業も楽しかったかもしれ ないと土をいじりながら思い出した。



1996年6月10日 月 曇り後雨  のんたん

 航平は絵本に微笑んだ。のんたんの絵本を見せると絵に 反応する。ページをめくると新しい方に目が行く。テレビ を見せるとやはり反応する。

 今まではまだだと思って試したことはなかった。知らな い間に本人は成長していた。成長の芽がプランターの草花 のように健やかに伸びて欲しい。



1996年6月11日 火 曇り時々雨  蚊

 航平はミトンでくるんだ左手を吸う癖が出来た。気を 付けて見るとちゅぱちゅぱとしばらく吸っている。

 航平はおしゃべりをだいぶするようになった。

 チャコちゃんは歯医者に行く。まだ腫れが引かない。

 梅雨入りしたというニュースがあった。

 かとり線香を焚いている。航平が蚊に刺されるのを見 過ごせなくてチャコちゃんが出してきた。僕はかとり線 香はむせるので嫌いだが航平の為に主張は通らない。航 平のお陰と言っても過言でないくらい健康になってかと り線香位は気にならなくなっている。

 一人でいた頃は蚊だって生き物だから飛んでいる蚊も 殺さないようにと思ったことがある。今は近くに寄れば すぐに追いかける。追いかけに追いかけている様子は客 観的に観察すると、ふわふわ浮いた風船を子供が飛び上 がってつついているようなものだ。大人がする様ではな い。

 かとり線香がついていてもなかなか蚊は落ちない。蚊 の下に持っていきたくもなる。部屋中かとり線香の煙り でいっぱいになっていても蚊はぶんぶん飛んでいる。友 人が蚊という字は虫へんにぶんだと言うのがよぎる。

 航平は蚊に刺されて何を言う訳でもないが蚊に刺され た痕を見るのが忍びない。



1996年6月12日 水 晴れ  神田屋

 チャコちゃんはちょっと離れた神田屋に自転車で行っ て赤身の刺身とホタテ貝を買ってきた。

 神田屋の魚はスーパーにはない新鮮さと美味しさでか つ安い。ただ難点は少し遠い。歩いて行くには億劫で自 動車で通りがかりに買う事が多い。買いに行くのにエン ジンをかける気持ちにはならないから神田屋の魚は偶然 的に食する品目だった。

 今は違う。チャコちゃんは自転車を手に入れてその評 価が刺身に現れた。チャコちゃんの力と判断で神田屋の 旨い魚にありつけた。



1996年6月13日 木 晴れ  歯周病

 チャコちゃんは歯医者に行った。腫れはだいぶ良く なったが長くかかることを覚悟して下さいと言われた。 もともと抜かなければならないと思ったのだから何で もはい、はいと答えてくるようだが先生を信頼してい るようだ。

 今歯周病月間だから自分も歯医者に行って看て貰う べきなのだろうが、看て貰えば必ず治療の必要な所が 出るだろう。布団をかぶって歯周病から逃れたい。



1996年6月14日 金 雨    カラス

 チャコちゃんが外に飛ぶあの鳥の飛び方がおかし いよと言う。見ると斜め上方に飛び出したかと思う と水泳選手の飛び込みのように羽をすぼめて下って くる。上がっては下り上がっては下る。こんな飛び 方は余り見ない。

 しかしよく気がついたね、と言うと、どうやら明 け方航平におっぱいをやるときぼんやりと窓の外を 眺めていて分かったらしい。

 チャコちゃんは回りに飛ぶ鳥を時々掌握している。 カラスはいたずらで今朝のベランダのバラをくいち ぎった当の犯人として疑われている。

 カラスの花に対する被害は甚大で屋上の手すりに 両面テープを張ってみたが今の所効果は何もない。 遠くを見ると屋上にかかしのようなものを立ててい るのが見えるので被害はうちだけではないようだ。

 よく銀座や新宿などの都会にカラスが集まると言 われてそんなカラスの好きな都心に住んでみたいも んだと思ったこともあったが、いたずらさえしなけ ればそれほど憎らしくもない。



1996年6月15日 土 晴れ  りんご果汁

 午後から駒沢公園に家族三人で行った。ぶた公園の奥 のベンチにチャコちゃんと並んで腰を架けてベビーカー をこちらに向けて航平と公園で遊ぶ子供達を眺めた。

 航平にはそこでりんご果汁をあげた。チャコちゃんと 航平を写真にとった。青葉の茂みは奥深くて真っ青の中 に二人を撮った。

 横で家族がブランコで遊ぶ。がっちりとしたお父さん が子供の乗るブランコを力一杯押すが子供は限界を楽し んでいる。ぶた公園では各国の家族が楽しんでいる。ど の家族も平和で穏やかで心から生々と休日を過ごしてい るように見えた。青葉と静けさ子供のはしゃぎ声、この 安心感はこれから先も永遠に続いて欲しい。



1996年6月16日 日 晴れ  未来の家族

 昼過ぎに康子ちゃんが訪問した。康子ちゃんは自分で 作った籐のかごを持ってきた。そういえばその籐を取り に箱根にチャコちゃんと美枝ちゃんも一緒に四人で箱根 にいったことがある。

 その時取った籐は今窓から見えるベランダにバラがか らまるかごになっている。籐を介して去年はクリスマス リースの展示会に康子ちゃんを訪ねた。

 康子ちゃんも一緒に昨日と同じコースで駒沢公園を回っ た。ぶた公園を通り越して森の中のテーブルの前に腰掛 けてジュースを飲みながら康子ちゃんの未来の家族を話 した。

 きっといい人が見つかるよと言いながらも康子ちゃん は信じられないと悲観的だった。航平は青葉の中で終始 ご機嫌だった。



1996年6月17日 月 晴れ  裏通り

 チャコちゃんはのどが少し痛いのではぜ山耳鼻科医院 に行った。はぜ山先生は最も信頼する耳鼻科の医者だ。 ほとんど言葉を発しないのだが治療は確実で何より満足 感が得られる。自分がこうして欲しいと思う治療をして くれる。先生は人の話を決して聞き逃さないで要求を確 実に受け取ってくれる。裏通りの小さい建物だけれどは ぜ山先生に感謝している人は多いはずだ。

 チャコちゃんは風邪の診断でのどをルゴールで消毒し て薬を貰ってきた。母乳はいままで通りにあげて良い。 様子は元気だけれど少しゆっくりとして体調を整える必 要がある。



1996年6月18日 火 雨と強い風  回答

 嵐のように強い風が吹いた。ベランダに置いたベンジャ ミンの木が倒れて鉢が割れた。土を集めておかないと排 水溝が詰まってしまうので、欠けた鉢と土を雨の中かた ずけた。チャコちゃんは鉢のかけらは底に敷くので取っ ておいてと言うけれどいっしょくたに袋の中に捨てざる を得なかった。

 逆の立場なら何で取っておかないのと僕は文句を言う がチャコちゃんはこんなときにも文句は言わない。いっ たいその不満は何処で解消されるのかなと今までは不思 議だった。最近思うのはあんまり不満にも思ってないの かなとも思う。

 チャコちゃんの回答

 取っておきたいと思ったのは事実だけれど取っておか なくてもいいと思ったのも事実で、つまりどっちでも良 くなった。



1996年6月19日 水 曇り後晴れ  除湿

 チャコちゃんの風邪ははぜ山先生の薬の効果もあって 快方に向かってすっかり元気を取り戻した。

 昨日から湿気が多くてエアコンで除湿をしている。一 人でいた頃は除湿をしたことはなかった。理由は除湿の 快適を知らなかったことと除湿時の電気消費量が多いだ ろうという漠然とした知識で何となく我慢していた。

 除湿はしてみて分かったが実に快適だ。冷え冷えとす ることもなく初夏の爽やかな清々しさを部屋中に広げて くれる。電気代がどれ程かかるかは分からないがかかっ たときにまた対処すればいい。



1996年6月20日 木 曇り時々晴れ  はち公

 マルエツの前から田園調布駅行きのバスで自由が丘ま で乗って床屋に行った。その後東横線で秋葉原に向かっ た。自由が丘から秋葉原は一本だけど遠いなあと思って 銀座線に乗り換えた。何時もの神田で降りた。

 もしやと思って改札口で値段を聞くと買った切符より 安い。清算払い戻しは出来ますかと聞くと黙って40円を 手渡して
「今度は調べて買って下さいね。」
と冷たく言われた。 乗り越しでお金を払うのは知っていたが貰うのは初めて だった。

 ネットスケープナビゲーターを買って(3090円)末広町 から電話した帰り道駒沢大学駅に着くとチャコちゃんが 航平を抱いて改札口で立っていた。ぐずるから迎えに来 たと言うけど駅は風がびゅんびゅん吹いて寒い。

 突然で嬉しかったが、 「忠犬はち公みたいだね。」と第一声を発したらチャコ ちゃんはぷんぷんになってしまった。直ぐに気を取り直 して航平の抱っこをバトンタッチして戻った。



1996年6月21日 金 晴れ  車のへこみ

 朝ごみを出すとうちの車のトランクが開きっぱなし だった。二日前にトヨタの人が来てトランクを開けた あとからずっと開きっぱなしだったようだ。事故の後 トランクの開閉具合が悪くて走行中に空いてしまった こともあった。

 11時頃妹が来た。
「インターネットを見られるのだからホームページを 作れば。」
と誘ってみるが作る気持ちは今の所ないらしい。  「この間は夫に一日三回電子メールを送った。」
と最近はパソコンも少しは楽しいようだ。

 夕方航平とチャコちゃんの三人で明日のお食い初め の為に鯛を二尾買いに行った。帰り道自動車修理工場 で修理をしている年配の男性に
「うちの車のへこみ傷をもし直すといくら位かかりま すか。」
と聞くと
「3万円位はかかるよ。」
と言うので
「急いで今持ってきます。」
と言って家に戻った。

 チャコちゃんと航平とバギーを車に載せて、ダイエー に行く為にとっておいたアルミ缶を積んで、エンジン をかけたら掛からなかった。

 トランクが空いていたのでバッテリーが上がってい た。修理工場に電話して
「バッテリーが上がったから行けなくなりました。」
と言うと、電話に出た年配の女性は全部を聞き取らな いで
「修理は今日はダメですから明日にして下さいと。」
と言うばかりで伝言の依頼をするのに随分とかかった。



1996年6月22日 土 曇り時々雨  相当かかる

 朝食後自動車修理工場に車を持っていった。工場は国 道246号線沿いで高速道路橋脚補強工事とビル建設工事 現場に位置して車線が三車線から一車線になっていると ころにある。

 うちから300メートルほどだが随分と渋滞していて工 場の横に車を付けると工事関係者が直ぐに近寄ってきた。 工場からも直ぐに昨日の修理工が出てきた。

 車を見るなり
「ああ、これはひどいよ。これは相当かかるよ。」
と言ってあっちからも、こっちからもトランクも開けて 見て、
「これは専門の業者に持って行って直さなけりゃならな いから昨日は三万って言ったけれど、五万円以上かかる よ。まあ、六万は見て貰わないと。」
と言われて即座に
「月曜日に持って来ますので宜しくお願いします。」
と答えた。

 そして航平のお食い初めの準備をした。11時頃から 二尾の鯛に鉄串をさしてをグリルにいれて焼き始めた。 グリルの前で汗をかきながら焼き具合を見ていると横 にお義父さんが立っていた。チャイムが鳴ってチャコ ちゃんと航平が招き入れたのに気がつかなくて驚いた。

 お食い初めの儀式としてビデオを撮りながらお義父 さんに食べさせて貰った。メニューは他に白かぶの煮物、 しいたけとにんじんの煮しめ、お赤飯、びわをしぼった ジュースだ。どれも食べると言っても口に付けるだけだ。

 実際は口にちょこっと付けて、そのあと大人がみんな で食べているのを航平が見ている。ご機嫌でにこにこと 笑い通しだった。人前では笑って貰うと一層ほっとする。



1996年6月23日 日 曇り時々晴れ  アルミ缶

 午後駒沢公園に行こうという時になって航平はすっか り寝入って、出るきっかけを失った。四時頃航平は目覚 めて、アルミ缶を出す為に碑文谷のダイエーに行くこと にした。緊急の用事ではない。外出が目的だ。

 たまったセービングコーラのアルミ缶を車に積んで事 故以来三ヶ月ぶりにダイエーに行った。チャコちゃんは 四ヶ月ぶりになる。ダイエーのそばの豪邸は立派な建物 であったのにすっかり無くなってマンション建設用の 更地になっていた。

 アルミ缶回収箱に入っているのはほとんどがビール缶 でコーラの缶は少なかった。しばらくぶりにダイエーに 入ると妙にすがすがしい気持ちになった。ここの商品な ら安いので何でも気に入れば自由に買える。コンピュー ター売場は一新されて幅広くなって、その横では昨日新 発売のファミコンが子供達をたくさん集めていた。

 日曜日は実に混雑していてバギーに乗った航平には危 険がいっぱいあった。それ程気にならず、自由に航平を 連れて行ける自分に変化していた。

 戻り明日車を持っていくのにトランクの中を整理した。 日産中古車センターの営業マンから電話があって、あり のままを話したがもう八時を回っていた。

 ひいおばあちゃんから電話で水天宮にお礼参りに行く ように言われた。



1996年6月24日 月 曇り後雨  二三日して

 「八時から開いて待ってるからすっぽかさないで必ず 車を持って来て下さい。」 と言われて八時前に車を出そうとするとタイヤの後ろに いもりのひからびたのが落ちていて蟻がいっぱいいる。

 木切れですくい上げて花壇の中に落として残った蟻の 何匹かも花壇の中に連れてやった。

 修理工場に車を着けるとおとといの修理工が表に立っ ていて、
「悪いけど修理する車が急に何台も入ったから二三日し て持ってきてくれる。」
と窓越しに言われた。
「水曜日に頼みます。」
と言って帰ってきた。

 夕方いもりを見に花壇に寄ると沢山の蟻が花の合間に いる。チャコちゃんが水やりのとき驚くので土の中に埋 めて蟻の道の穴を開けた。花壇の中に蟻がいると花の育 ちがとても良いような気がする。



1996年6月25日 火 曇り   抗ヒスタミン剤

 チャコちゃんは体に湿疹が度々出るので心配になって 先週皮膚科に診察に行った。内蔵疾患からの疑いも有る ので採血した結果を今日聞いた。

 内蔵疾患の異常の所見は無く、疲れからくるじんまし んだろうということだった。今まではおっぱいが張るの でしぼって捨てていたがそれも母乳の出し過ぎで疲れる 原因になりそうなので止めるようにしてみる。

 抗ヒスタミン剤を処方されて飲んだ。抗ヒスタミン剤 は僕にとっては喘息でなじみの薬だ。副作用が比較的少 ないといって睡眠薬として飲んでいた薬剤師の友人がい た。子供は産むのも育てるのも大仕事だ。



1996年6月26日 水 曇り  だっこバトンタッチ法

 自動車修理工場に修理の依頼を電話すると板金工場に 連絡するのでしばらく待って欲しい旨の返事があった。

 チャコちゃんは皮膚科に診察に出かけた。じんましん は薬を飲んでからすっかりと治った。ただ眠くなるよう で体がだるいらしい。引き続き一日三回分の抗ヒスタミ ン剤を二日分貰ってきた。

 航平の体重はだっこバトンタッチ法で計測すると7キ ログラムだった。航平は顔の湿疹はすっかりなくなり、 鼻の具合も良くて、すべてに順調で健康だ。生後100日。 身長はシーツ模様計測法によると65センチだった。だ いたい普通のところ。顔はふっくらとして今は誰が見て もかわいいと言うよりは内々でかわいいという感じだ。

 保健所から3-4カ月検診の案内が届いている。二日間 にわたってツベルクリン検査の他、BCGの接種、母親の レントゲン撮影、歯科、栄養、保育の指導などがある。 費用無料。7月3日と5日。

 航平と毎日お風呂に入って水道使用量が前回と比べて 増えたので検針員が理由を聞きに来た。



1996年6月27日 木 曇り    子供との会話

 チャコちゃんの前の仕事は児童館の先生だった。その 時の同僚3人とその内の一人が5歳の子供K君を連れて 航平を見に訪れた。

 皆子供には慣れている。K君との間のやり取りを聞い ていてさすがだなと思ったのは子供だからといって決し てあいまいな返答をしない。いくら5歳といってもK君 はとても反応がいい。その反応にきっちりと応じて話を 進めるとだんだん自分も子供だと意識しなくなってくる。

 K君も一緒にいて飽きない。だから大人もK君も楽し い。K君は大人の話を吸収して成長してゆくようで心地 いい。子供はうるさいからあっちにいっててなんてなら なくてよかった。

 美恵ちゃん結婚するっておめでとう。



1996年6月28日 金 曇り  不良品

 デパートからの贈答品が不良品だった。電話すると新し いものと取り替えるという返事だった。

 これは贈答品だったので話は異なるがニューヨークに半 年間いた時、買ったポットの水が漏った。店に持っていく と確かにこの品物は不良品だ。と主人は言ってお金を返し た。買った体重計が三ヶ月程でくるうようになった。持っ ていくと確かにくるっていると言って返金した。

 使い捨てコンタクトレンズ3カ月分を買った。三週間し ていたがなかなか慣れない。その間、店の眼科医の診察を 三回受けたが結局過敏症の体質で痛いのは続くと分かった。 店の主人は残念だけれど貴方の目にコンタクトレンズはあ わないと言って眼科医に支払った内の一部の3000円程を のぞいて今までに使用した分も含めて全額返金した。シー ツを買った。ほつれがあった。持っていったら返金した。

 不良品の時に返金か交換かを選択できる事は当前とアメ リカは教えてくれた。そのたびに気持ちは晴れて嬉しかっ た。店に対する信頼は増した。何故私たちは返金という選 択肢を選ぶことがほとんど出来ないのだろう。



1996年6月29日 土 晴れ  かめのぼうや

 晴れた少し暑い土曜の夕方だ。遅い昼食を3時頃食べて スイカも食べてなんとなく胃が重くて疲れて、買い物の後 航平とベッドで横になっていた。

 朝日新聞の中で落合恵子がくどうなおこ詩集を紹介して いる書評を、チャコちゃんが読んでいて教えてくれた。

 落ち込んだ夜はかめの歩き方についての詩、 「かめのぼうや」をゆっくりと読む。

・・・・まず(歩こうかな?)と思う
    つぎに(よし歩こう!)と決心する
    この決心というのがだいじなんだ・・・・。

 チャコちゃんはくどうなおこのファンで幾つかの名言を 引用することがある。この言葉が疲れた気持ちにすうっと はいった。家族一緒で良かったと思う一瞬だった。



1996年6月30日 日 晴れ 建礼門院

 水天宮に行った。今日は犬の日だそうでお参りに来る 人が多い。地下鉄で一直線で途中からはほとんど人の乗っ ていない電車の中で航平もおとなしくしていた。営団地 下鉄水天宮駅はそのまま箱崎のシティエアターミナルに 続いている。白色灯のダウンライトが幾つか配置されて 少しだけの異国情緒を感じながら上に上がるとそこが水 天宮だった。建礼門院徳子の菩提寺で安産祈願に行く人 が多い。

 チャコちゃんが妊娠中の頃ひいおばあちゃんに必ず行 くようにと諭されて出かけた。今度は必ずお礼参りに行 くようにと言われて出かけてきた。自分にはそれほどの 信仰心を建礼門院に持っている訳でもないがそれでひい おばあちゃんが幸せな気持ちになるのなら自分も嬉しい と思いつつやってきた。

 お参りして後ろの社務所を見ると赤ちゃん休息所があっ て覗いていると係りの人が招き入れた。中はエアコンディ ショニングしてあって椅子が20個とベッドが二つあった。 先客が二組あったがしばらくすると自分達だけのスペース になり外の多数の参拝客の中でこんな静かな空間を存外に 得てほっとできた。航平はおしめを替えてミルクを飲みご 機嫌になった。

 その後地下鉄に戻り三越前駅で降りて三越デパートに入っ た。中元シーズン開幕とボーナス支給時期と高島屋の不祥 事の反動もあるのかどうか目の回るような混雑だった。

 たいやきをたべてミルク入り冷抹茶を飲んだ。冷抹茶の 立ち飲みスタンドは今まで見たことが無かったが年配客が 行列して購入していた。なかなかすっきりとするあじわい だった。次はミルクなしを飲んでみよう。

 チャコちゃんは食べたことがないと言うのでピータンを 二つと、他に春巻き、てんぷらを買った。銀座線に乗り換 えるつもりでいた切符が半蔵門線の自動改札口を通れたの でそのまま一直線に帰宅した。


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